良かった
この女房で良かった。
子供が生まれたのを機に、家を買うこと計画し始める。
35年ローンを組めるけど、年齢からして繰り上げ返済必須。貯蓄も大して無い。
しかし不動産屋は単純に、年収の4分の1の月額返済でシミュレーションした物件を紹介して来る。
定年後の俺にどれ程働けと言うのか。無理ゲー過ぎる。
簿記一級を持っている今は専業主婦をしてくれている女房が、パートなりで働いてもらったケースで、一人シミュレーションしてみる。
これなら平均的な住宅を購入してもなんとか完済できそうだ。
だが男として情け無くなってくる。
いっそ繰り上げや共働きなぞせず、どこかのタイミングで生保で返済するシナリオにしようかな。
自分一人の考えが行き詰まってきたので、女房に聞いてみた。
『ママが働くことを前提にローン組む?』
『え。良いよそんな無理しなくて。
そろそろ働くけど、それは教育費とか万が一の貯蓄に回したい。
老後に家賃を払い続ける賃貸は不安だし嫌だけど、パパの定年後にゆっくりできれば狭くても古くても充分だよ』
正直ホッとした。
身の丈に合わない買い物して、毎月完済に怯えてる自分ばかり浮かんでたんだ。
上を見たらキリが無いんだよな。
月にあと1万、いや3万は返済に回せるかな、小遣い減らせば。外食減らせば。旅行やめれば。
て、このシミュレーション、一月程度の我慢とワケが違うから、やっぱり破綻してたんよね。
それをとめてくれて、ホッとした。
誰に見栄をはろうとしてたんだろう。
ブランド品を欲しがらず、毛玉のついたパジャマをものともしない女房。
俺のゴムが緩くなった下着の買い替えを直ぐに求めてくる女房。
俺はおまえのために生きる。